第37章 一人と孤独
―――でも、私がすべき事は不安がる事じゃない。
追いかけてついていきたい気持ちを抑え、はドアから離れて自室に向かう。
信じなければ。彼を。
帰ってきてくれると。
帰って来たら笑顔でお帰りを言って。
そうしたら彼は、それまで張り詰めていた鋭く光る表情を緩めて、安心したように微笑むのだ。
その笑顔がは好きだった。
きっとこの不安は、ずっとついて回るのだろう。
バージルが悪魔退治を続ける限り、ずっと。
それが代償。
彼といる為に必要なもの。
彼でなくたってそうだ。離れて不安になるのは、誰だって同じ。
だから、常に。
無事を。
バージルが帰って来たのは夕方だった。
ドアが開けられる音が響く。一気に輝くの表情。
――帰ってきてくれた!
急いで出迎えに出ると、行く前に告げた通り、バージルは美味しいと評判のケーキ屋の袋を下げていた。
彼女の方も、キッチンでビーフシチューを煮込んでいる。すぐにでも夕飯は食べられる。
約束を守ってくれた事がいちいち嬉しくて、笑顔で「お帰りなさい」と言うと。
一番好きなあの優しい笑顔が返ってきた。
2007/04/29