第37章 一人と孤独
約束。
正直、守れるかわからない約束だ。
バージルにとってそれは、胸が痛くて仕方のない事なのだが。も気持ちは同じ。
二人ともわかっていて何も言わない。
言えば壊れてしまう。
何かが。
バージルはコツリと一歩、から離れた。
「じゃあ…行ってくる」
「うん」
が笑っているうちに、その場から離れようとしたが。ふと、引き下がるのに数歩を要した距離を、バージルは一瞬で詰めた。
に身体を押しつけるようにして近付き、驚く彼女の頬を支え、唇を重ねる。
1度で終わらせるつもりだったが、気持ちの収拾がつかなくて。
ついばむように2度、3度。
そうして、1秒でも長く近付いていたいとでも言うように顔をわずかに離したままの瞳を見つめて。
やがてふっと彼女に微笑み、ゆっくりと身体を離す。
後に何も言わず、バージルは家を出た。
行ってしまった。悪魔のもとに。
はドアを見つめてその場に佇む。
これが今生の別れではないというのに、いつもいつもひどく不安になる。
バージルは半分悪魔だから。
いつか私は忘れられて、悪魔のもとへ行ってしまうかもしれないと。
無限大の不安。
絶対の可能性。
恐怖の惑い。
揺れる虚しさ。
それに、バージルに限っては考えられないと思う反面、もし痛手を負っていたらと思うといても立ってもいられない。
帰らないかもしれない。
それがどんなに、どんなに不安な事か。