第37章 一人と孤独
なぜ自分は悪魔退治をしているのか。
本当に、を不安にさせてまでやらなければならない必要な事なのか。
いくら己に問うてみても、返ってくるのは沈黙のみ。
の髪をするりと撫でて、目を伏せる。
気取られてはいけない。迷っている事を。
「気を付けて」
そう微笑む彼女に
ただ
「あぁ。心配するな」
そう返すしか。
相手を好きであれば、他には何もいらないと思っていた。
愛しさが、守りたいという気持ちがあれば、他には何も。
しかし現実は、嘲笑うかのように皮肉で残酷で忠実だった。
どれほど俺を掻き回せば気が済む。時間は止まってはくれないし、物事もうまくいかないし、気持ちだって。
もう十分惑い迷い躊躇い悩んだというのに。
いつまで。
いつまで俺は、を不安にさせていなければならない?
一緒にいるのは俺のわがままだというのに。引き換えに彼女に渡されるのは孤独への恐怖。
一緒にいるのに。隣にいるはずなのに、またいつか訪れる恐怖への予感を抱かせる。
残酷すぎるのではないか。
それでも、行かなければならなかった。
一緒にいるために、離れなければならなかった。
半日でも一日でも離れてしまうなら、身を裂かれるような思いは同じ。
ただ、それがどれだけの間続くのか。
それだけだ。
「何か食べたいものはあるか?」
ふと思い付いて言ってみた。不安にさせるばかりで、あげられるものもあげられていない気がしたから。
するとは少し驚いたような顔をして、首を傾げて。
「んー…アップルパイ食べたいな」
「わかった。帰りに買って来よう」
彼女はくすりと笑った。
「どうしたの急に」
「いや。何となく…」
「ふうん…。ねえ、バージルこそ何か食べたいものある?」
「そうだな…。のビーフシチューが食べたいな」
「ん、わかった。今日の夕飯に作っておく」
「なら、夕飯までには必ず帰ろう」