第36章 小さな親切 (ダンテ子供化ギャグ)
バタン、と音がして、バージルが戻って来た。手にはしっかりと子供服を持っている。
流石バージルだ。あのやたら物が多い物置の中、ちゃんと探し当てて来たらしい。
「着替えて来い。夕飯は…」
「あ、行くって」
「やはりな。これくらいの事で外食を逃してはダンテではない」
「たりめーだろ。逃してたまるか」
ダンテがもたつきながらソファを降りると、不意に首根っこを掴まれて身体が浮いた。
バージルが持ち上げているらしい。目の前に軽々と掲げられる。
「おわっちょっ…ズボン落ちる!」
「それはやめて!」
とっさに目を覆うの横で、じたばた暴れるダンテをバージルが部屋に連れていく。
猫でもつまんでいるような仕草だ。手近なバスルームのドアを開けると、中にぺいっと放り投げた。
「早くしろ」
そう言って、ドアを閉める。
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何とかダンテが着替え、レストランに来た3人だったが。
3人とも、微妙な顔つきをしていた。
いつものように大食いなダンテだが、食欲は大人のまま。顔が隠れるくらい大きなメニューをテーブルに立て掛けてあれこれ注文していると、ウエイトレスが一言。
「よく食べるお子様ですね」
微笑ましそうにそう言ったのだ。
言われた瞬間3人ともきょとんとしていたが、ウエイトレスが去ると顔を見合わせた。
笑えるような、笑えないような。
ダンテが子供なんて嫌だが、親子だと間違われた事が面白くて。
しかし、怒ったように口を開いたのはダンテだった。
「おめーらもう俺の目の前に立つな!」
「なんで?」
「見下ろされてるとこえーんだよ。特にバージル! 目付き悪いし蹴られそうだしでヒヤヒヤしたぜ。あんたが子供に好かれない理由がわかった」
「それは悪かったな。つい殺気が出てしまった」