第36章 小さな親切 (ダンテ子供化ギャグ)
しばらくして。
遠くから、何かガラガラずるずる引きずる音が響いてきた。
布と金属を一緒くたにしているような。
何だろうとは思ったが、二人は別段気にも止めなかった。
が、それは次第に事務所に近づいてきて。
やがて。
とんとん、とノックの音。
普段なら聞こえ辛かったであろうそれは、心地よい静寂に包まれた事務所に十分大きく響いた。
バージルの邪魔にならないよう、が素早く立ち上がる。彼は一瞬を見上げたが、対応を任せたようでまた本に視線を戻した。
ドアに向かいながら、は少しだけ首を傾げる。
ガラスに映る人影が随分小さい。子供のようだ。
こんないかにも楽しくなさそうな場所に、一体何の用なのだろう。
「今開けまーす」
言って、かちゃりとドアを開けたは。
その姿を見下ろした瞬間、固まった。
「………」
の時も止まる。
頭の中が真っ白になるとはこの事かと、どこかでこれ以上ないくらいに納得した。
「…どうした?」
ドアを開けたまま固まってしまったを見て、バージルが不審に思う。
ドアの方を振り返って目を見張った。