第35章 数
「口付けは、好きな相手と繋がる事ができる最初の手段だ」
「……繋がる…」
「好きな相手となら、一緒にいたいと思うのは当然だろう。二人が一人だったならと思う奴もいるかもしれない。しかし、そんな事はあり得ない」
「………」
「せめてもの悪足掻きかもな。口付けは好きだという心の証明だ。身体を介して、繋がる」
「…でも、そんなの自己満足じゃ…」
「そうだな。俺もそう思う。…そう、思っていた」
しかし、理屈ではないのだ。繋がりたいという気持ちは。
そこが、何故好きなのかという理由と似ている気がする。
漠然としていて不確かで、なのに絶対的に信用していて確かにそこにある。
「…こんな事を思うのは、俺にも人間の血が流れているからなのだろうな…」
がそこにいると感じたい。一緒にいたい。
ずっと、側に。
できる事なら、ずっと繋がっていたい。
呟くと、はバージルを見た。
不思議そうな顔。驚いているのかもしれない。
それを横目で見て、バージルは少し苦笑する。全く、こんな事を言うなんて自分らしくない。
「…………」
しばらくバージルの顔を見つめていたは、不意に身を乗り出した。
何をするのだろうと思って見ていると、唇に柔らかい感触。
触れたと思った瞬間温かさは離れて、ふわりと抱きつかれる。
「……?」
驚きながらも彼女の背中に腕を回す。顔が見えないのが少し不安になった。