第35章 数
「……どのくらい、した」
我ながら女々しい質問だ。しかしこんな事を聞いても、彼女は嫌な顔もせずに答えてくる。
ただ、事実を。
「んー…1000は行ってない気がするけど…」
当たり前だ。
行ってたらおかしくなりそうだ。
「100…行ったかなぁ……行ってないかな。いやでも、平均1日2回だとして1ヶ月60回、とすると年……あれ、結構いく」
天井を見上げる。思い出しているのだろうか。
思い出しているのなら、どうやって思い出しているのだろう。
男の顔を? それとも、口付けの時の―――
バージルは律儀に考え込むの顎をつかんだ。
苛々する。今までの唇に触れた男全てを斬り殺したい。
きょとんとするの唇を、強引にふさぐ。
この気持ちを紛らわせるように、半分でも伝われとばかりに、今度は舌を差し入れて中を掻き回した。
わずかな水音。
それが増さないうちに、歯列をなぞり顔を離す。
唇をぬぐってを見ると、呆れたような顔をしていた。
意外な表情にバージルも目を見張る。
「…何で、皆口付けしたがるかなぁ」
皆。
不快感が跳ねた。
「私なんかとしたって、別に何も…」
「もう何も言うな。お前はデリカシーという言葉を知らんのか」
口を塞ぐ意味で、また唇を重ねる。
彼女の思考の精密さと答えを出すことへの真摯さはバージルの好むところではあったが、今回のこのような状況では流石に勘弁して欲しい。
さすがに声も出せず、わずかにはうめいた。