第34章 波紋
昼食の後で出かけるようになったのはいつからだった?
最近。
最近、書店に毎日入り浸って。
…毎日。
―――嘘…
書店に行ってたんじゃなくて、バイトしてたの…?
驚いたの視線を受けて、バージルは困ったように頭をかく。
そういえば、毎日書店に行くくせに買い物をしないのはおかしいなと思っていたけど。
まさか、バイトをしてるなんて……
「……一緒に、行ってくれるか?」
沈黙に耐えかねたような声。
しかしは、震える声で言った。
「何で…何で言ってくれなかったの? 旅行のためにバイトしてるって…」
「ご機嫌取りをしているようで嫌だった」
「でも…話してくれればよかったのに」
「にだって何かする事があるのだろう? 邪魔はしたくない」
「それにいつも、夕方には買い物して帰って来るじゃ…」
「夕飯くらいは一緒に食べたいからな」
涙が出そうだった。いや、これは出る。
私は馬鹿だ。
バージルはいつもいつも、私に気を遣ってくれていた。
「……馬鹿…!」
「何がだ」
「バージルじゃない。私が!」
声が震えて、泣いているのが自分でわかった。
バージルはいつも優しかったのに。
なのに私は。
「ごめんね…」
「なぜ謝る?」
「私、何も気付いてなくて、バージルに冷たくあたって…」
だめ。涙こぼれる。
はそれを隠そうと、再び膝に顔をうずめる。
呼吸を落ち着かせようとしていると、不意にソファが揺れた。
反対側で重みがなくなったような。バージルが立ち上がったのだろう。
顔を上げると、彼は正面にいた。
のぞき込まれて少し困る。
「が謝る事はない。俺が隠していたのだからな」
「でも…」
「何も言うな」