• テキストサイズ

【DMC】バージル夢短編集

第33章 一枚の幸せ



仕方なくバージルが少し前を見ると、またシャッター音。

「………」

駄目だ。
バージルは羞恥で死にそうだった。

あのカメラを叩き割ったらは怒るだろうか。怒るだろうなと思い直し、息をつく。
我慢するしかない。

「彼氏さん、こっち見て笑ってくださいよー」

全く笑わず、それどころか困った顔をするバージルに、カメラマンも困ったような声。
やっぱり駄目だろうか、とは少し反省する。


無理矢理写真を一緒に撮って、バージルはきっと気分を悪くしただろう。
きっとすごく嫌なのに、我慢をしているのだ。
のわがままの為に。

バージルに顔を向けて言う。

「わがまま言ってごめんね。写真、嫌だったね」

「………」

「もう、やめよう。掲載も断って…」

「いや」

遮られた言葉に、は目を見張った。
揺れるアイスブルーな目を見つめれば、珍しく微笑みが僅かに浮かんでいて。

「が嬉しいなら、俺はいい」

「え…でも私のせいでバージルが嫌な思いするのは…」

「別に嫌ではない」

バージルは、の頭をゆっくりとなでた。

それには更に目を見張る。外では滅多な事がない限り触れて来ないのに…。
穏やかな微笑み。
ゆるやかにたゆたう水面のような。

バージルの微笑みは、の気持ちまで穏やかにしてくれる。

「これは写真を撮られることに不慣れな俺の問題だ。が嬉しいなら、俺も嬉しい。お前が嬉しいならいい」

それに、はしばし瞬き、花開くように笑んだ。
髪に触れるバージルの手に自分の手を添え、嬉しそうに恥ずかしそうに笑う。

/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp