第33章 一枚の幸せ
ご機嫌で道路の端に寄るとは裏腹に、バージルはかなり仏頂面になった。
咎めるような視線がに刺さり、声をかけられる。
「…」
「なぁに?」
「…やっぱりやめないか?」
「何でよー! たまにはいいと思うけど」
「しかし、雑誌に載るのだろう」
「絶対載るわけでもないでしょ。多分載らない確率の方が高いよ?だからほら! 遊びだと思って、ね!」
心底恥ずかしいからやめて欲しかったバージルだが、のはしゃぎように断れずにいた。
の嬉しそうな顔はいつ見ても可愛い。出来る限り喜ばせてあげたい。
だからといって、写真を撮られるのはとてつもなく恥ずかしい。
―――どうしたものか…
そう思っていると。
いつもはバージルの思いを汲み取って、外ではあまりくっついて来ないが、不意にぴったりと身体を寄せ腕を絡めて来た。
「…!!」
それに驚いてを見ると、同時にシャッター音。
「彼氏さん、こっち向いてくださーい」
のんきなカメラマンの声。斬ってやろうかと殺意が湧く。
撮られた、という事に羞恥が溢れ、バージルは柄にもなく動揺し視線をさまよわせた。
「、やはり俺は…」
「いいのいいの。一緒に撮ろう?」
「だが…」
「照れなくていいんだよ。ほら、前見て」
言いながら、はバージルの表情に新鮮さを覚えた。
困り果てた顔。いつもの凛とした顔からは思いもしないくらい、戸惑って恥ずかしがっている。
強気が全く見えなくて、彼もこんな表情をするのだと感心した。