第32章 Nightmare (逆ハーバージル落)
「……」
バージルがの手を握り直した。はそこで、初めてバージルと視線を合わせる。
アイスブルーの瞳は、真剣な色でじっとを見つめていた。
「なぜその程度の事だと決めつける。酷いうなされようだったというのに、心配かけたくないだと? 俺にとってはその方が心配だ」
「そうだぜ。悪夢は人に言えっていうじゃねぇか。俺に言ってくれりゃ、怖くないように抱き締めてやったのに…」
ダンテもそう言うと、の頬に優しく指先を滑らせた。
バージルはその手をぺしっと払う。
「に触るな。汚れる」
「何だよ! あんたも触ってんじゃねえか!」
「俺はいい」
その自分勝手な物言いに、は思わず吹き出した。
の小さな笑い声に、ダンテとバージルも安心したように表情を柔らかくする。
「怖ければ、遠慮なく俺を呼べ。いつでも来てやる」
「うん…」
「バージルじゃなくて俺呼べよ! 身体温めてや…うお!」
「馬鹿者」
ひゅっとバージルの拳が空を切った。ダンテが身体を反らして避ける。
「くだらない事を抜かすな。斬るぞ」
「あんた二言目には殴るか斬るだな! に嫌われるぜ」
「………」
嫌われるの一言に、バージルはぴたりと黙り込んだ。眉間にしわを寄せてダンテを睨み、少し考え込む。
そんな二人のいつもと変わらない様子を見て、は心が落ち着くのがわかる。
いつの間にか鼓動は落ち着きを取り戻し、恐怖は除かれていた。
ただ、それはつかの間の休息で。
夜になればまた悪夢が再来するという思いが、半ば諦めとともに胸中を渦巻いた。