第30章 PARTY NIGHT (逆ハー)
着替え終わったダンテとバージルは、リビングへと降りて行った。先を歩くダンテが、黒色のネクタイを整えながら階段を降りる。
降りていく途中で、リビングに誰か立っているのを見て、足を止めた。
漆黒のナイトドレス。緩やかな曲線を描き、真っ直ぐ立つ姿。
きらきらと裾や胸元に輝く石は宝石のようだ。目元にすっと入れた朱と唇の紅が息を呑むほど色気を醸し、髪をついと耳元に掛ける仕草に思わず魅入る。
どこぞの姫か女王かというような、跪き手を取りそうになるほどの気品。
彼女が振り向き、それが誰なのかを知ったダンテは目を見張った。
「―――」
「遅い! 早くしないと遅れるよ!」
「あぁ……、 悪い」
姿と言葉遣いが一致せず、混乱する。
驚いた。一瞬だとわからず、貴族の依頼人が来たのかと思ったのだ。
それはバージルも同じようで、背後でポケットに入れようとしていたハンカチを落としていた。
を見つめて目を見張り、絶句。
「何やってんの? バージル。落としたよ?」
落ちたハンカチをが流れるような仕草で拾い、手渡してくる。
バージルははっと我に返ると、未だ信じられないような視線を向けたまま、ハンカチを受け取った。
「化けたものだな…」
「しっつれいね! どういう意味よ!」
思わず漏れた本音。
が口をとがらせる。
「そのまんまの意味だぜ。、いつもの100倍は綺麗だ…」
ダンテも言い、惚れ惚れとした視線をよこしてくる。
100倍って、じゃあいつもは100分の1しか綺麗じゃないわけ。
とは怒るに怒れず、は照れたようにうつむいた。