第29章 悪魔よりも強い人 (逆ハー)
「。こっちに来い」
今すぐダンテを斬りたそうなバージルの声。だががいるためにダンテに斬りかかれないようで、を呼ぶ。
しかしダンテがそれをさせるはずもなく。
「行かせるか」
そう言って、すかさずを後ろに下がらせる。
は途方に暮れてされるがまま。
バージルのもとへ行くとダンテは怒るだろう。しかしダンテのもとにいても、バージルを怒らせるだけ。
怒ると怖いのは―――
―――…どっちもどっちか
しかし。
「…」
バージルが見せた表情。
辛さを我慢している、苦しそうな。しかしそれを懸命に押し隠すような。
そんな顔で、名前呼ばないでよ…。
「………」
はダンテの腕をくぐり抜けていた。
「…!」
ダンテが呼ぶが、バージルが素早くの腕をつかみ、優しく引き寄せる。
彼がダンテと違う所は、問答無用の力任せでない点だ。燃える炎のように力任せなダンテと、誘われるまま行けば凍ったように動けなくなる、氷のようなバージル。
どちらも魅力があり、強引さがある。
「!」
ダンテの叫び。
ダンテはバージルと違って、辛さを隠したりはしない。むきだしの感情を表情に浮かべ、泣きそうな顔でを呼んだ。
「そりゃないぜ! 買い物行くって言ったじゃねえか!」
「キャンセルだ。残念だったな」
今度はバージルが勝ち誇った顔。
それに、更にダンテは荒ぶる。
「何でだよ! 約束だろ!」
「………もう…」
毎度の事ながら延々と続く争いに、は息をつくしかない。
どうして仲良くできないんだろう。好かれるのは嬉しいけど、この二人は少し極端すぎると思う。