第26章 本屋 (逆ハー)
は一瞬でそちらに意識が周り、息を飲んで耳を押さえた。
「まだ別の仲間がいる可能性もある。もしもの時はダンテを盾にしておけ。心配するな、5分で戻る」
鼻同士がくっつきそうな至近距離。は微動だにできない。
不敵笑いをわずかに浮かべるバージルは、そんな彼女をおかしそうに見つめ。
「おいっ! くっつきすぎだろ!」
はたまりかねたダンテに後ろから抱き締められる。
身体を持ち上げたバージルはダンテを一瞥。何も言わずに本に目を戻した。
「ダンテ…行こ」
ここにいてはバージルの邪魔になるだけだ。はダンテの手を引き、その場を離れた。
やがて、するりとバージルが移動する。
こんな事はさほど珍しい事ではない。
便利屋の仕事柄、恨みを買う輩もたくさんいる。
大丈夫だと思うけど…。
無意識にバージルを探して店内を見回す。
それにダンテが気付かないはずもなく。
の手を引いて店内の隅に行き、壁に押し付け前に立ち塞がる。
「あいつなら大丈夫だから心配すんな」
「え…っ」
「尾けてる奴らだろ?」
「知ってたの?」
「あたりめーだ」
馬鹿にすんなとダンテは笑い、の首筋に顔をゆっくりと落とす。
「な…何やって…」
「ん。見つかんねぇように隠れてる」
「嘘! どいてよ」
「やだね。さっきからバージルばっか気にしやがって」
艶やかな髪を撫でれば見える素肌。
の匂い。吸い込んだまま吐き出したくない。