第3章 昔のこと
『あ…雨…』
外へ出ると小雨が降っていた
『これくらいなら…走って帰ろうかな…』
走って校舎を出た
『(何か強くなってきたな…着くまでにはずぶ濡れになっちゃいそう…どこかで雨宿りを……ん…?)』
とある屋根のついた場所に誰かがいる
『(一緒に雨宿りはちょっと…もう1本行ったところに……!!)』
雨宿りしている人とすれ違っただけで何か悪寒を感じた
『(ただの雨宿りしてる人じゃない…!)』
「白雪コヨミちゃん…だよね…?」
『………!!』
知ってる
この感じのする人は…危ない人だ
何もしてなくてもそこに存在するだけで胸がざわつく
『…人違いです』
「おかしいなぁ…。この写真は…キミだろ…?」
男の持っていたのはコヨミの写真
『……っ!!』
コヨミは思い切り走って逃げた
『(助けて…!!)』
昔の記憶がよみがえる
『(あのときみたいに…ひどいことされる…!!)』
「少しお話したいだけなんだ…!」
『嫌…!来ないで…!』
ドンッ…!
『…!ごめんなさ…!』
万里「コヨミ…?」
『万里さ…っ』
万里「お前が傘持ってってねぇって監督ちゃんが言うから…」
『助けて…っ!』
万里「…!?」
コヨミは万里に抱きついた
万里「助けてって……あいつか」
「だ、誰だよそいつ…。何でコヨミちゃんがそんなガラの悪いやつと…」
万里「あぁ…?コイツに何か用か…?」
「ひっ…」
男は逃げていった
万里「…行ったぞ。大丈夫か?」
『………』
コヨミの手は震えて万里の制服をがっしりと掴んでいた
万里「とりあえず帰ろうぜ。俺がいれば誰も寄ってこねぇだろ」
万里はコヨミの頭を撫でた
コヨミは小さく頷いた
―――――
万里「ただいま」
いづみ「おかえり…って、コヨミちゃんずぶ濡れじゃない!!」
万里「あぁ、ちょっとな」
いづみ「今お風呂沸かしてくるから、早く着替えてね!はい、タオル!」
『あ…はい…』
コヨミはタオルを受け取って部屋に戻った