第2章 1 箱庭
何度かやってみたが赤い果実は赤いままだった。
ごめんね、そういって肩の力を抜いた瞬間キツネが果実をくわえて取ってしまった。
その果実は、見慣れた影さえも写さないほどに真っ白なもの。
「え、戻った?」
目の前には嬉しそうに白い果実を食べるキツネ。
もう一度赤い果実を手に取る。
やはり白くなった。しかし、意識してやれば果実は元のままだった。
なんだ、こんなに簡単なことだったのか。
少しでも気を緩めると白くなってしまうが、白くなり始めた段階ならば元に戻せる。
完全に白くなってしまったものはさすがに戻すことは出来なかったが。
これなら、外に出られる。
そう思うと嬉しくなった。
白い果実を食べるキツネを横目に赤いままの果実をかじりながら明日はちょっと外に出ようと決めた。
「ねぇ、明日付き合ってくれる??」
そう言ってキツネに声をかけるとちょっとこちらのほうを向いた。
いいってことかな?
なんて思いながら夕焼けに染まり始めた空を見ていた。
同じ夕焼けなのに、こんなにも違って見えるなんて思いもしなかったなと、もう懐かしさすら感じる日々に笑っていた。
これからのことを思いながら。