第2章 1 箱庭
外も少し歩くようになった。
とはいっても、あたり一面真っ白にしてしまうわけにもいかないので、必要最低限にとどめている。
泉がすぐ近くにあってよかったと本当に思う。
水辺を探してねり歩かなければいけなくなるところだった。
今日もキツネが探してきてくれた果実と、私が採ってきた小さな木苺を食べる。
木苺、といってもやはり真っ白なのだが。
そして当然のようにキツネはその木苺を欲しそうに鼻を寄せてくる。
「あなたは本当に白いのが好きだね?」
そう言って差し出せば嬉しそうに食べた。
「まぁ、味は変わってないと思うんだけど……。」
流石に味まで変えてしまっていたら我ながら引いてしまう。
やっぱり、色鮮やかなものを食べたいなぁ、なんて思いながらりんごのような果実へ手を伸ばす。
「白くなりませんように、白くなりませんように……!!」
念じるように唱えながら果実を手に取った。
力が入ったからか、自然と閉じてしまった瞼をそっと開けてみる。
赤い果実は、一瞬白く染まりかけて、また鮮やかな赤へと戻った。
「……え、うそ」
じっと見ていても果実はもとの赤いままだ。
隣のキツネも不思議そうに見つめては首をかしげている。
「やった、やったよ!!白くならなかった!ねぇ、見てこれ!!!」
嘘みたいにうれしくて、思わずキツネに差し出して見せる。
左右にコテン、と首を傾げて見せた後色の変わらない果実に鼻を寄せて匂いを嗅いでいる。
やった!不用意にこの世界を変えずに済む!!
そう思うと嬉しくなった。
自分が悪い病気の感染源のように思えて嫌だったのだ。
異世界からやってきた病原菌。
そんな疎外感があったからだ。
しかし、キツネは目の前の果実が変わらないことに気が付くと、キュウンと切なそうに鳴いた。
「っえ?、あ、嫌なの??白いのがいいの??」
切なそうに鳴くキツネに何だか悪い気になった。
キツネはこれじゃ嫌だとでも言うように鼻で果実を押しやってくる。
「ま、まって!わかった、やってみるから、!」
真っ赤な果実を見ると白くなれ!と念じてみたが何も変わらない。
「あ、あれ……??」