第5章 闇夜の調べ
初めて聞く名前だったがまさか学園の理事長さんの名前だとは。紹介すると言っても。私なんかに今後関係があるとは思えなかったが。ルシスさんともあればそのくらいの方ですら呼び捨てなんだなぁなんて思う。
「でも、そうですね……そう思うと、案外丁度いいかもしれませんね。」
「丁度いい、ですか?」
そんなことを呑気に思っていたのだが、何やら納得したかの様子で私を見るルシスさんと目が合った。
「ええ、一度私と屋敷へ戻り、そのまま学園へ向かうんです。貴方が学園へ行くことはきっと承知の上……あそこへ行けばそうそう手出しはしてきませんよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、勿論。学園はこのカルヴァン王国だけでなく、ヴェルツヌの地全土から王族貴族の子息たちが通う学園です。そんな場所へ許可なく兵を仕向けるなんて他国に戦を仕向けると見られてもおかしくはない。いくら天女捜索に殺気立っているとしても、そんな馬鹿な真似はしない筈です。」
なるほど……確かにそう思えば納得がいく気がする。いや、でもそれ以上に私がこれから行く場所はそんなすごいところなのかと、聞かされてはいたつもりなのだが改めて聞かされるとやっていけるのか少し不安になる。
「とはいえ、形としては私が学園に向かうために貴女を屋敷へ迎えに行くような手はずになりますので、その日のうちには屋敷を出ますよ。」
「え、えっと……十分です!ジェイドさんとハイデスさんに挨拶が出来ればと思っていたので……うれしいです、ありがとうございます!」
とはいえ、ひとまずは屋敷に戻れることになった私は、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。