第2章 1 箱庭
この世界に来て、分かった事がいくつかある。
完全に、私が住んでいた世界とは異なること。
一日の時間は元の世界とあまり変わらないこと。
そして何より、私が特異な体質だということ。
あの白い建物は何かの遺跡のようで、とても広い。
あまり深くへは怖くて行けないけれど、やはりどこも真っ白で美しかった。
光は入らない筈なのに、最初にいたあの部屋の近くは壁や天井がぼんやりと光っていた。
外に出ると綺麗な草原と林。
不思議なことに、建物の近くの草木は建物と同じように真っ白だった。
そしてその原因が、どうやら私であること。
初めて外に足を踏み出したとき、足元の植物が突然真っ白に染まったのだ。
私が歩いた場所が白くなって道となる。
それはゆっくりと広がって、面積を広げると一定の広さで止まる。
枯れてしまっているわけではないようで、寧ろ踏んだ後すら残らないほどに逞しく生えている。
はじめは怖くなって建物から出なくなった。
すると、最初に出会ったキツネがどこからか果物などを一つ一つ運んできてくれた。
私の体はそれすらも白へと変えてしまうものだから、わけがわからなかった。
しかし、何故かその白くなった果物をキツネが欲しがるのだ。
持ってきたものではなく、わざわざその白くなった果物を食べたがる。
実も果肉も、ヘタまで真っ白い果実なんて不気味で美味しそうに見えないのに、キツネがあまりに美味しそうに食べるものだから、この体質もさほど悪いものではないのかもしれない。
そう思うようになった。
思えばこのキツネがいなければ私は自分の体の変化を受け入れられなかったかもしれない。
キツネは言わば私の命の恩人なのだろう。
そんなキツネが、喜んでくれているならこの体質で良かったかもしれない。