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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


彼女の手を引いて屋敷に着くと使用人達が出迎える中、すぐに執事長のスチュワートが側に来た。

「お帰りなさいませ、ハイデス様。此方の御嬢様が先程御伝え頂いた御客様で御座いますね?」

「あぁ、ただ言葉が通じないらしくな。驚いて声が出せないだけかもしれないが……私は一度身支度に入る。彼女は客室へ御案内しろ。」

「畏まりました。」

スチュワートに彼女を任せると急いで自室へと戻る。
任務から帰ったまま、甲冑を着替えただけで決して清潔とは言えない身体だったのが悔やまれる。
いや、せめてあの甲冑のまま彼女と接しなかっただけましだろうか。

急いで汗を流し着替えを済ませ部屋を出る。
己の身支度を手伝わせるのは好まない為、基本的に面倒な着付け以外は一人で行った。

すぐ部屋の外に控えていた執事に先程の彼女の部屋へ案内させた。
何を聞くか、いや……聞ける状態かどうか、というところからだろうか。

不思議と、疲れた身体でも面倒だとは感じなかった。


客室へ入ると中央のカウチに彼女が、すぐ側にうちの主治医が来ていた。
恐らくスチュワートが手配したのだろう。

「これは旦那様、お邪魔してますぞ。」

「いや、此方こそ感謝する。彼女の様子は?」

「ふむ、少し診させてもらいましたが、外傷や争った痕跡はありませんな。ただ、少し魔力が乱れておりますので恐らくそれが原因かと。……如何なさいます?」

「ならば私が受けよう。万が一、彼女に知られて困ることがあってはならないからな。」

客人に何かあったならば、その家の主が責任を持つのが一般的であるから、こうして主人自ら客人の面倒を診るのは可笑しくないことだった。

「少し、我慢してくれ。」

ハイデス達の会話を不安そうに見ていた彼女に、手振りで少し魔力を診させて貰うことを伝えると小さく頷いた。

額に手を添え、力を送ると反応があった。
優しい、光の様な魔力を持った子だと思った。

何か解るかもしれない、とゆっくり診ていくが特にそれ以上返ってくるものがない。

魔力を持つものはこうして相手の情報を調べることが出来る。
それは、その者の持つ力や心身の状態、記憶までと様々だ。
それなのに、何も反応が無かったのだ。
いや、解らなかったと言うべきか。
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