第2章 1 箱庭
キツネにとっての怪しい者とは一体どんな人だろうかと考えつつも何も持っていないことを示すために手を広げた。
服は以前のまま、タイトスカートにブラウス。
何かを隠すスペースはない。
ほらね?
そう言おうとした時、不意に視界に入ってきたものにびっくりして声を上げてしまった。
「、ええっ!??なにこれ!?」
その声に驚いたようで、キツネが私から少し距離をとる。
いや、仕方がないだろう。
だって、私の髪がこの空間に溶け込むかのように白かったのだ。
本来はここ数年染めていなかった為、地毛の黒に近いこげ茶だったはず。
なのにどうして……?
状況が把握できずに唖然とする。
もしかして、浦島太郎的な感じで一気に歳取っちゃった?
いや、肌の感じはそんなに変わっていないから、歳は取っていないはず。
「でも、肌もやたらと白い……??」
部屋全体が真っ白で、更に光が乱反射しているから本来の色が分かりにくい。
「光で白く見えるだけだよね…??」
色々と考えているうちに、私から距離を取っていた先ほどのキツネが近付いてきた。
「あ……。」
その時、初めて気が付いた。
鼻先を合わせるようにして近付くキツネの毛並みがふわりと風に揺れる。
「私と同じ色なんだね、あなた。」
そうだよ。
私の言葉に応えるかのように、ぺろりと頬を舐められた。
「、ちょっと、ふふ……くすぐったいって。」
まるで私の涙の痕をぬぐうかのように、キツネは私の頬を舐めていた。
こうして、不思議な世界での私の生活は始まった。