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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で



「……嘗ての歴史通りならば、天女は白い髪に白い肌、つまりその身体そのものがエネルギー体だ。天女のエネルギーは消える事は愚か、減ることすら無いという。触れた物質全てをエネルギー体に変える力があり、例え天女自身が死んだ後も変わらない。それが歴史に残る天女だ。」

天女の事実は隊長以外に伝えられることはない。
あまりに分かりやすい容姿の為にその必要はあるのだろうかと考えるが、それ以上に天女の召喚を広めては成らないのだ。
隊員達は今回の任務の目的を知らされていない。
良く見るとエルメスと呼ばれる男の胸にも隊長程ではないが勲章が月明かりに光っていることから、それなりの地位なのだろう。

「そんなの、化け物じゃねぇかよ。生きた生命エネルギーなんざ……魔力だろうが何だろうがお構い無しだろ?天使か魔族でもなければ太刀打ちすら出来ねぇ代物だ。天使のやつ恐ろしいもん送り込んで来やがる。」

「そうは言っても、天女は世界を救った救世主だからな。同時に、滅びの神でもあるが。」

「……後者となる条件は。」

「そんな事俺が知るか。本人にでも聞いてくれ。」

「それこそ、無理な話だぜ……。」

森の木々の隙間から垣間見える暗い空に、どちらともなく息を吐いた。

「幾ら小部隊としてだからって、隊長と副隊長が両方駆り出されるんじゃ、他の奴等が怪しむ……。俺らシュヴァルツだけじゃねぇ、他の奴等だってそうだ。」

「分かってはいる。だが、陛下の思し召しだ。致し方あるまい。」

「ったく、ジジイみてぇなこと言いやがって……」

「まぁ、そう頭に血を上らすな。次を見たら一度戻ろう。意味も解らず振り回されているんだ、兵も疲れが溜まってきている。」

「あーあ、素直な可愛い子ならいいんだけどなぁ……どうするよ、万が一干からびたババアだったら。ここまで探し回ってそれじゃあんまりだろ。」

「馬鹿、口を慎め。見た目なんて関係ないだろ。そもそも見付けたところで厳重保護だ。俺達には関係無い。」

「そうだがなぁ、……ひょっこり現れてくれないものですかねぇ、天女さんよ……。」

天を仰ぐ男の声は夜の闇に呑まれて消えた。
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