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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


今から5000年前、ヴェルツゥヌの地と呼ばれる大陸では長く続いた戦争からの流行り病、そして天の裁きと言い伝えられる天変地異で滅びかけた世界に天使へ助けを乞う。

人々の声に応えた天使は人間に生命エネルギーとなる宝玉を与えたが、人間はその力の根元を知らなかった。
それは天女の宝玉と呼ばれ、溢れる精水が河となり地上へ広まるとたちまち土地を肥やし病を消し去った。

天使は、これは長くは持たぬ。どうしてもと望むならば考えてやらないこともない。

そう言葉を残したが、貪欲な人間はもっと、もっとと力を欲し宝玉を酷使した。
するとある時を境に、宝玉から魔力が溢れ出す。
本来人間達には害であった魔力とは異なり、その身に取り込める力は更に人間を欲深いものへと変えていった。
権力者達が挙って力を求め、不死の力、生命の力と呼ばれ人々は魔力に取り憑かれた。

それから2000年の月日が流れ、宝玉は世界に恩恵を与え、平和と共に奥深い欲望という闇をもたらした。
80年程だった人間の寿命は長い者で500を越え、あらゆる力を得たが何れも王族、貴族の恵まれた者達のみであった。

弱者と強者の差は埋められぬ程広がり、力を悪用する国が現れる。
力を持たない小国は争いに敗れ朽ちていった。

膨大な魔力が人間達に広まり続ける中、突如白いエネルギー源を出していた宝玉が赤黒い血を流した。
驚いた人間たちは宝玉を初めて地に下ろす。

すると中で真っ白い乙女が鎖で己の首を引きちぎって息絶えていた。


そこで初めて人間達は天女の宝玉の、その言葉の意味を知る。

力の源を無くした人間達は天使に助けを乞うが、知ったものかと見捨てられた。
絶望に打ち拉がれる人間達に追い討ちを掛けるよう、流れた天女の血は川を染め、海を染めた。
そして妖気が世界を覆うようになった。
それを人間達は天女の呪いだと口にする。
妖気が溢れると魔物が蔓延った。

妖気に包まれた土地は朽ち果て、取り残された生命は皆息絶えた。

国々は残された世界を守るため乙女の体を封印し、各々の国から一番強い魔法使いを2人ずつ出し、一人には世界を守らせ、残りの一人に乙女を封印させた。
人柱を何人も埋め、そこに乙女の呪いを閉じ込める巨大な塔を建てた。
いずれその建物は魔法使いを育てる為に使われ、コーニンクライク魔法学校として今日迄君臨する。
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