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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で



魔力の受け渡しとは双方の合意の元で行われ、本来その共鳴率は個々の相性と魔力の性質により異なる。
強く共鳴する者とは互いの身体に強い影響を与え、そしてその行為中には流れ込む魔力と共に強い快楽を与え続ける。

行為には幾つかの種類があり、それは曖昧な境界により割り振られるが、選択肢は魔力の強い者が握る。
魔力の弱い者から強い者がその力を吸い取るには弱い者の抵抗は完全に無効とされ、逆に強い者の力を弱い者が吸い取ることは不可能である。
だが、力の強い者が弱い者へ与える事は可能で、その時弱い者の力も同時に与えるかどうかは双方の意思により異なる。

主に力を得る為に魔力を奪う行為は影で捕食と呼ばれ、反対に弱いものへ己の力を分け与える行為は恩恵と呼ばれた。
それらはその名の通り正反対の作用を与える。
魔力を急激に取られる程の補食を行えば最悪命を落とすが、魔力を与えられるという事は持ち主の力を受け継ぐという事でその命すら延びる。

ごく稀に、魔力値が変わらぬ者同士が行為を行うとお互いにその意思があれば互いに与えられる魔力が身体を巡り、その力が増すと言われるが、どちらかが補食を求めた時、最悪の結果を招く事となる。

よって、補食は強者の私利私欲から。
恩恵は愛する者を守る為、己よりも短い生を授かった相手と同じ時を過ごすことを望んだ者が行う。

何れにせよそれら全ては強者により決められ、行われた。



嘗て魔力は、人間社会の表舞台に存在し得なかった力。
それが、人間達に与えられた時その歯車が狂い初める。

魔力は生命エネルギーと直結する為、人々の身体に影響を与えその生活を繁栄させた。

しかし、同時に歴然と現れた力の差に平等であった人間達の生命は不平等となり、姿形が同じとはいえ完全なるヒエラルヒーが成立したのだった。

事の始まり今から5000年も遡る。
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