第2章 1 箱庭
泣き疲れて眠っていた私は、ぺろぺろと頬を舐められる感覚で目が覚めた。
くすぐったい。
そう思って徐に目を開けてぼやける視界を手で擦る。
ぼんやりとしていた輪郭が次第にはっきりしてくる。
「えっ……キツネ、??」
キツネと狼を掛け合わせたような、凛とした獣だった。
何より驚いたのが、その毛色。
この部屋のように真っ白だった。
「……えっと、私食べられちゃう感じかな?」
パニックになると逆に冷静になる性格故か、とぼけた質問が飛び出る。
キツネ相手に言葉が通じるとでも思っているのか。
そもそも食べられるならとっくに息の根を止められているだろう等といった答えが私の頭の中で飛び交う。
ふるふる、と首を振るキツネに、ですよね。なんて我ながら可笑しくなって笑った。
「って、今の何?」
キツネが私の問い掛けに答えた、???
ビックリして目の前のキツネを見るも私の周りをうろうろし始める。
「……そんな筈ないよね。」
まさか動物が人間の言葉が分かるなんてそんなファンタジーじゃあるまいし。
私の周りをくるくる回り始めたキツネに、どうすればいいのか分からなくなるが、その様子からしてこちらに危害を加えることはなさそうだ。
というよりも、興味津々、といった感じだ。
「品定めされてるのかな。」
私の目の前で止まったキツネと目が合う。
「わ、私怪しい者じゃないよ……?」
品良く座ったキツネはじっと私のことを見ている。
なんだろう、目の前のキツネの神々しさからか、いやに緊張する。