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私を愛したモノなど

第2章 1 箱庭


なに?
今、彼は何て言った?

分からない。わからない。
思考が停止しているかのようだった。

「っ、……ゃ……」

浮遊感がして、世界が動くと抱き上げられたのだということに気が付く。
そのまま最初のベッドへ下ろされると、何も言わずにセラフィムは私のいるベッドへと乗り上げてきた。

何で?

そう言いたくても、彼を見詰めることしか出来ない。

「……何で、何も聞かないのって顔してるね。」

徐に、彼の着ていた上着が脱ぎ捨てられて、気が付けば、上半身は何も纏っていない。
そのまま、私のワンピースへ手が延びる。
前をリボンで結ばれただけのそれは簡単に服としての機能を失った。

火照った肌が、ひんやりとした空気に触れる。
それだけで、私の身体は疼きを増してしまいそうだった。

「やっ、なんで……っ」

必死に冷静になろうとして、腕を伸ばして静止を求める。
このままじゃだめだ、本当に流されちゃう。

「……嫌なの?」

「……だって、……わたし、貴方の事、何も知らない、!それ、に……私、こんな、のいや……」

突然、当たり前のように肌を重ねられる行為は、嫌だった。
身体は熱を持ち、目の前の相手を身体の芯が求めている。

でも、このままでは嫌だった。

「……僕が、嫌?」

嫌じゃない。

そう頭の中で私が答える。
けれど、その言葉は伝えられない。

「ねぇ、アンリ……僕を見てよ。」

そう言って、肌を撫でる手が、ゆっくりと、ゆっくりと、私を煽る。
肩から胸元、腰へとギリギリ刺激を与えないところをゆっくりと撫でていく。
ワンピースの前は全てはだけていて、隠すものなんて無い。
息を荒くして必死に耐える私を、彼は静かに見詰めている。
空色の瞳は、相変わらず飲み込まれてしまいそうな程美しかった。

「僕は、知ってるよ……。キミが違う世界から来たことも、君の体の変化も、君の前の世界の事も……君の事は全部、ね。」

「っう、そ……」

「フフ、言ったでしょ?僕、カミサマだって。」

全部、冗談だと思っていた。
からかってるのだと……全部、本当のことだったの?

彼が私の両手を取るとそのままベッドへ押さえ付けた。
身動きを取れない私は、ただ彼を見詰める。

「ねぇ、アンリ……僕が君をこの世界に呼んだって言ったら、君は信じる?」

彼の言葉が、静かな部屋に響いた。
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