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私を愛したモノなど

第2章 1 箱庭


気が付けば、もう最初の部屋に戻ってきている。
奥が私が眠っていた寝室で、今いる場所がセラフィムが私を待っていてくれた場所。

かなり広さがあって、家具が寝室と同じように全部高級なアンティーク家具みたい。

フカフカのソファに下ろされて、差し出された飲み物を一口もらう。
どこまでも動作が様になるなぁ……なんてセラフィムを眺める。
本当にこの人はどこかの国の王子様なんじゃないかと思う。
今はお忍びで避暑地とか別荘に訪れていて……なんて下らないことを考えるも、今はそんな事を考えている場合じゃないと我に返る。

今、ここで彼に私のことを話そうと小さく決心する。
このタイミングを逃したら、また言えなくなっちゃう気がする。
だから、今私はこの世界の人じゃないってことを伝えなきゃいけない。
彼を見れば、どうしたの?と笑いかけてくれて、少し緊張が解れた。

「あのっ、私……伝えなきゃいけないことがっ……、!」

意を決して、セラフィムに向かい合うが、私がその言葉を伝えることは叶わなかった。

突然ドクン、と心臓が跳ね、身体中を巡る違和感。

忘れもしない、この感覚に訳が分からなくなる。

「、ぁっ……ゃ…ッ」

何で、こんな時に……

どうしよう、どうしようと頭をフル回転させても、解決策は分からない。
もう、セラフィムの顔なんて見れなかった。

これは終わったことだと思っていた。
あの時だけの、一過性の発作だと思っていたのに、私の体はあの感覚を再び思い出させる。
身体の芯が熱を持って、ぞくぞくと背筋が震える。

みるみるうちに火照る私の身体と荒くなる息。
そして、身体中が快楽を求め始める。

触りたい、気持ちいいのが欲しい、早く、触って、はやく……

目の前にはセラフィムがいるのに、こんな姿見せられる筈ないのに……そんな思いが私を恐怖させる。

見られたくない、だって、こんなの私じゃない。
自分で自分の制御が効かなかった。

こんな、だって突然すぎる。
さっきまで何とも無かったのに。

しかし、そんな思いは叶う筈も無く、目の前には人影。
勿論、誰なんて確認する必要もない。
確認する勇気も、私にはない。

体の異変を必死に隠そうと私はただその場にうずくまるが、その時、声がした。

「……嗚呼、時間みたいだね。」

彼のその言葉の意味を理解出来ない私は、本当に頭の中が真っ白になった。
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