第5章 闇夜の調べ
「いいえ、聞かなくては。抵抗があると言うのであれば他の案を用意しますよ。」
「ほ、他の案があるんですか?」
「えぇ、簡単なことです。」
そんなタイミングで、代案を、と申し出てくれるルシスさんに、思わず落とした視線を上げていた。
「フフフ……私が、ハイデスの代わりを務めましょう。私ならば、貴女の魔力に酔うこともありませんので。」
だが、返ってきた言葉は、私の思っていたそれと違っていて、その言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった程だった。
それは、必要な行為であるとはいえ、愛もなく二人に抱かれるという意味である。
それは、ハイデスさん一人に体を許すよりも、もっとダメなのでは?
「な……え、?……る、ルシスさん、と…、?」
「ええ、そうです……勿論、アンリ…貴女が望んでくれるのであれば、ですがね。」
気が付けば、クスクスと悪戯に笑ったルシスさんの腕が私にしっかりと回されていた。
抱き寄せられて、近くなる視線に私は目を合わすことが出来ない。だって、急にそんなことを言われるだなんて、思ってもみなかったのだから。
「っ、……そ、そんなこと…今、言われても……」
「勿論、今すぐにというわけではありません。選択肢として、ハイデスだけではないのだということを覚えていて下されば、それだけでいい。」
「な、なんで……えっと、待って下さい。私、軽い女だって…軽蔑、されてたかなって……思って…」
「まさか。何を言いますか……そうしなければいけない立場にしてしまったことへ、貴女に対して私自身が強く悔いていることはあれど、アンリ、貴女を軽蔑するなどと……そんな筈あるわけがない。」
私の言葉に驚いた声を上げたルシスさんは、そのまま私の身体を強く抱き締めた。
「本音を言うと……この役目をハイデスに譲らなければ良かったとすら思うのですよ。可愛らしい貴女に触れられる、そんな役目……あまりにも魅力的だ。今となれば、喉から手が出る程に欲しいのに……」
密着する身体と、耳元で囁かれる言葉に、心臓が煩く音を立てていく。
「フフフ、耳まで真っ赤ですね……可愛らしい。……私に触れられる想像でもしましたか?」
そんな私を煽るような、意地の悪い声と共に、私の耳に唇が触れる。
鼓膜に直接届くその言葉に、身体の体温が一気に上がった感覚がした。