第2章 1 箱庭
初めてあった人に助けられて、寝床まで借りて……優しい言葉はこの世界の常識なのかな。
ほら、女性を誉めないと男性の価値が下がるとか。
だとしたら、しばらくの間は色んな意味でこの世界とのギャップに驚かされそうだ。
そういえば、どうしても彼は私の不思議な力の事を知っていたんだろう。
思い返してみればキツネにあげる果物を白くした時も驚かなかったし……
それに、セラフィムは“私のは”特に美味しいって言った。
なら、あのようなことが出来るのは不思議なことじゃなくて、きっと皆出来るのかな。
「ねぇ、セラフィム……幾つか、聞いてもいい?
「勿論、どうぞ?」
ドラゴンの洞窟を抜けて、元来た扉を抜けるとまた来た道を通っていく。
「えっと、上で果物を食べたでしょ?あの時……私が果物を白くしたのって、他の人も出来るの?」
「出来る人もいるね。あれはね、自分の中の魔力や生命エネルギーを他のモノに分け与える行為なんだ。例えば、さっきみたいに食べ物にやると簡単に他者にその力を分けることが出来る。アクセサリーなんかに使うと魔力を秘めた魔道具として重宝される。そうやって作った石や、さっきの洞窟の宝石なんかは魔石って言って色んな力を保存出来る。フフ……まさか何も知らずにやってるなんてね。」
凄い……何も知らずにっていうか、触ったら勝手になったんだけど。
ドラゴンの時の話といい、今の話といい、完全に私の知らない世界だ。
魔力が私の中にもあるのかな……私、魔法、使えるの?
「さっきタマゴを助けた時も、仕組み的には同じだよ。」
「そうなの?」
「根本的なところはね。でも、本当はね、少し呼吸が整うとか、後は自力で回復するか親が助けられるレベルまでなら出来るって意味だったんだ。けどまさか、完全に治しちゃったからさぁ……流石に驚いたなぁ。」
「え、……変なこと、しちゃったの?」
「違うよ、誉めてるんだよ。この子が君を選んだのも、この子の親が君を頼ったのもそういうことなんだろうね。」
私の腕の中のタマゴは、眩しいくらいに輝いている。
両手を添えると、とくんとくん、と音が聞こえるような気がする。
聞こえないけど、感じることが出来る。
どんな子が、産まれてくるんだろう……私のせいで、親と離れ離れになっちゃったけど、この子が私を選んでくれたんだから、頑張らないとね。