第5章 闇夜の調べ
他に誰も居ないとはいえ、こんな外でルシスさんの膝の上に座らされている状況があまりにも落ち着かない。だが、そんなことは気にもしない様子で真剣な目を向けてくるルシスさんの言葉は思いの外、真剣な話のようだった。
「魔力酔い……私が、セラフィムの毒?に犯されてた、あれみたいなことですか?」
「えぇ、そうです。……アンリ、貴女の魔力は人間の身体には強すぎる。ただでさえ、人の魔力を一方的に取り込む行為は正気を失うのですから。」
「……なる、ほど…?正気を…?」
「えぇ。お互いの魔力をきちんと合わせる前に体内に取り込むと、基本は精神に負荷が掛かりますから。ハイデスは今その状態なのです。精神的負荷と中毒症、それらによる身体の異変です。」
魔力を合わせるっていうのは、あれかな……血液型違うと輸血出来ませんよね、みたいな??魔力はそれを合わせる作業みたいなのがきっとあるんだろう……いや、違うかもしれないけど。
でも、今の話でハイデスさんの不調がどう言うものなのか分かったということで良いんだろう。
ということは、やっぱり私が原因なのか。
何かそんな気はしていたけれども、こうして聞くと正直ショックだった。
思わず視線を落としてしまう私に、ルシスさんはそっと肩を抱いた。
「貴女がそんな顔する必要は無いのですよ。それに、必要な行為でもあることは確かなので。」
「え、?いけないこと、では無い、と……?」
「いえ、今回のは頻度的にいけないことでしたね。ですが、これから……嫌だと言っても難しい行為にはなります。」