第5章 闇夜の調べ
簡単な外に出る用のワンピースと、暖かなコートを羽織ると、軽く髪を整えて広間へ向かった。一人でも着れるものを用意しておいて良かったと思った。
「おや、早かったですね。……では、行きましょうか。」
当然のように差し出された手に、ほんの少し戸惑いながらも私はそれに手を重ねた。
外はやっぱり寒くて、首もとのふわふわが無かったら凍えていたかもしれない、なんて思いながらルシスさんに手を引かれ、石段をゆっくりと降りる。
雪こそまだ降っていないが、カラカラと落ち葉が風に飛ばされて、乾いた音を立てていた。
本当に、静かな場所だと思った。
まるで、私とルシスさん以外の人が、誰もいないかのような錯覚に陥る。
「……どういたしました?」
そんなことを考えていれば、どうかしたのかと私の事を覗くルシスさんがいて、その長い艶やかな髪を冷たい風に靡かせた。
「あ、いえ……本当に、静かな場所だなと、思いまして…。」
「確かに、そうですね。好んでこの地を訪れるものなど、そう居ませんし……なので、昨日の騒がしさは、本当に珍しいのですよ。」
確かに、言われてみればシュバルツの人達は皆気さくで楽しくて、彼らといる時は外がこんなにも静かだなんて気が付きもしなかった。
途中小道に逸れて、お城の周りを歩いていく。
石畳の上の枯れ葉を踏むとサクサクと音を立てる。