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私を愛したモノなど

第2章 1 箱庭


何でだろう、その言葉を伝えるのが少し怖い。
それに、魂の契約って?
このタマゴを育てるとか、そういうこと?

私に出来るものなのか……そもそも、この子は下手したら2000年の時を生きる力を持っていて、でも私は普通の人間で、って……あれ、私って普通の人間なの?
さっきの力が私のだとしたら、私普通の人間じゃなくなってる?
髪の色とか、果物白くしたりとか、この世界に来て自分の変化は目に見えて起きている。
と言うことは、私、やっぱり普通じゃなくなってるの?

ひとり悶々と考えていれば、不意にその身体を抱き上げられる。

「、っひゃ、!」

「この子、大切にしてあげな。大丈夫……出来るから。」

「あ、うん……出来る、かな」

「フフ、出来るよ。それにドラークと魂の契約を結ぶことは名誉あることらしいから、きっと色々と君を助けてくれる。……さぁ、そろそろ戻らないと。」

そう言うとドラゴン達を背に、来た道を戻っていく。
この宝石の洞窟ともお別れ。勿論、手には光るタマゴを抱いたまま。
また抱っこなのか、と思ったけど、この宝石の山を自分の足で越えられる自信はない。
仕方無い、彼の好意に甘えて運んでもらうことにしようと思う。

名誉、か……
国とかあるのかな。やっぱり、この世界のシステムを知らない限りは何も出来ない。
キツネと二人で果物生活も悪くないけど、せっかくだからもっとこの世界を見てみたい。
こんなに美しい場所がある、この世界をもっと知りたい。

その為には、やっぱり私がここじゃない世界から来たことを伝えないと。
それから、色々なことを教えてもらおう。
知らないことには何も始まらない。

ここに来たときは全てどうでも良かったのに……キツネと森を散歩してるだけでも楽しかった。
このまま、この時が続いてもいいなって本気で思っていたから。
不思議な花を見付けて、初めて見る妖精にビックリして。
心地よい風を浴びるだけで癒されていた。

でも、人間余裕が出来ると欲が出てくるもので、この世界でもう一度頑張ってみようかな、なんて……そう思えた。
あれかな、彼にこんなに甘やかされてるからかな。
一時であれ、誰かの温もりも感じられたのは幸せだ。
今だけだとしても、もう少しだけこうしていたいと感じる……
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