第2章 1 箱庭
次の瞬間、手が何かに包まれるような感覚がして、それと同時に辺りが一瞬光ったように感じた。
そっと目を開けると、嬉しそうにセラフィムが笑っていた。
そして、私と彼の手の中には煌々と光り輝くひとつのタマゴがあった。
「……え、セラフィム……これって……」
「ア、ハハ、っ君は本当に最高だよ。まさかこれ程だなんて!」
「、きゃあっ!」
突然ギュッと抱き締められて、思わず落としそうになってしまったタマゴをしっかり支える。
「ああ、アンリ……君は最高の天女だよ。」
そう言って口付けを落とすセラフィムに、気が動転してしまって私は付いていけない。
「ん、っまって、セラフィム待って……!」
やっとの思いで体勢を立て直すと、腕の中のタマゴを見る。
他のタマゴと同様に、いや、それ以上に何か清んだ光を放っている。
助けられたの?本当に、私がやったの?
訳も分からずに、この子を助けたいと思っただけだったのに、それで本当に助けられたというのだろうか。
でも、腕の中のタマゴは美しく輝いている。
「……良かったぁ。」
安心して思わず肩の力が抜ける。
「ね、君なら出来るって言ったでしょ?」
「本当に、私がやったの……?」
もしかしたら、私がやったように見せかけてセラフィムの力なんじゃ……
そう思った時、様子を見ていたらしいこの子の親……目の前のドラゴンが大きく羽を広げて、そしてゆっくりと頭を下げた。
「、わ……」
その動作のあまりの美しさに言葉を失う。
これは、お礼、なのかな?
「……これはね、魂の契約のサイン。君と、そのタマゴの子が魂の契約を結んだ証。本当は、契約を結んだドラーク自身が行う動作なんだけど、タマゴだからね……変わりにこの子がやってるんだよ。」
「え?魂の契約??私が?」
突然のファンタジーフレーズにセラフィムとドラゴン、そしてタマゴを交互に見ることしか出来なくなる。
「魔力を持つ生き物は人間と魂の契約を結ぶことがある。それはどちらかが死ぬまで切れることはない……その子が君を選んだんだよ。」
「え、この子が……?で、でもっ、私何も分からない!!ドラゴンだって、初めて見たし、それに……、っ」
私はこの世界の人間じゃない。
そう言いかけて、言葉が出なくなった。