第5章 闇夜の調べ
「アリアスお前っ、自分はついこの前いい感じの子が見つかったからって偉そうにしやがって……、!!!」
「っ、!?なっ、お前、どこでそれを……、!」
「俺の情報網舐めんなよ?!どーせまた、黒魔術師はやっぱり怖いー、だとか、お父様がお許しにならないわー、だとか言われて振られる運命なんだよ!ざまぁみやがれ!ばーか!!」
飲んでいた珈琲を吹き出しそうになるアリアスさんに対し、鬼の首を取ったかというように得意げに吠えるカールさん。
やっぱりこの二人は面白すぎると思いつつ、流石に耐えきれなくなって肩を震わせて笑ってしまう。隣から呆れたようなエルメスさんの溜息が聞こえるが、特に二人を咎める様子もない。きっといつもこんな感じの二人何だろうなぁと思ったら、なんだか急にクロヴィス家の空気が懐かしくなってしまった。ハイデスさんとジェイドさんも、ここまでではないがよく冗談交じりの言い合いをしていたな、なんてことを思い出す。
「……あの、エルメスさん。ハイデスさんの部屋って、どこなんですか?」
「ん?気になるか?」
「はい。お見舞いという程でもないですけど、会いたいなって……。」
「そうか。そりゃいい、アイツもアンリちゃんに会いたがってるだろうよ。案内するから、着いてきてくれ。」
そう言って立ち上がるエルメスさんの後を追いながら、また抜け駆けっすか?!と叫ぶカールさんの声を聴いては笑っていた。
閉じられた扉の向こうで、尚も何やら声を上げているカールさんがジェーンさんやアリアスさんに宥められている声がまだ聞こえていた。
「全く、煩くて悪いな……疲れただろ?」
「いえ、楽しかったですよ。エルメスさんが本当に女の子にモテるんだなってことも分かりましたし。」
私が少し悪戯っぽく笑ってそういえば、バツが悪そうにエルメスさんはその柔らかそうな栗色の髪を搔いた。
「もう、冗談よしてくれよアンリちゃん……頼むから、あいつ等の言う事なんて本気にしないでくれよ?」
そんな冗談を交えつつ、少しの距離をエルメスさんと笑いながら歩いていれば、思っていたよりも近い距離にハイデスさんが使っている部屋はあった。