第5章 闇夜の調べ
恐る恐る二人を見ればエルメスさんはちょっと苦笑いをして、ジェーンさんは逆にこっちが恥ずかしくなるくらい照れた顔をして私から顔を背けた。
「……アンリ嬢、すまない。アイツは師匠の事となるといつもああなんだ。」
丁度ジェーンさんの隣の席に座ったアリアスさんが何故か申し訳なさそうに頭を下げた。
「え、アリアスさんが謝ることじゃ……」
「気にしないでいいっすよ!それもいつもの事ってやつなんでね。」
ニカリと笑って答えるのはカールさんだ。朝だというのに誰よりも爽やかである。昨日の事も差程気にしていない様子で安心した。
「あ、カールさん、おはようございます。……フフフ、なんだかカールさんの笑った顔見たら安心しました。」
「、え?お、俺の……?、」
「はい、昨日の話の事、皆さんどう思ってるのかなって……ちょっと気になってたので…。」
「え、あ~……それがな、アンリちゃん、すまない。」
私の言葉に、カールさんよりも先にエルメスさんが申し訳なさそうに割って入った。
「なんつうか、あれはかなり難しい話でな。もう少しこっちで話し合ってから考える。っても、アンリちゃんのことをどうこう思うような奴は俺らの中には誰一人としていないから安心してくれ。ただ、最終決定までこいつらには忘れてもらう形になってるから、その件についてとぼけたこと言っても気にしないでくれよな。」
「ん??なんの話っすか、エルメス副長。あ、もしかして昨日のあの話っすか??」
「あ、あー……そうだ、その話だ。うるせぇのがいるけど悪いなって言ってたんだ。」
エルメスさんの説明の通り、何の話だとよくわかってなさそうに首をかしげるカールさんがいた。何だか面倒事を押し付けてしまったかのような気持ちになって申し訳なくある。
だが、相変わらずの察しのいいエルメスさんは、そんな私の表情に気が付いてか、変わらずニコリと爽やかな笑顔をくれた。大丈夫だと、そう言ってくれているのだろうか。