第5章 闇夜の調べ
「え、えっと……でも、信じていい人かどうかは、ちゃんと見てるつもりです。」
ルシスさんのその黒い黒い瞳に映った私は、何だか少し不安そうな顔をしていた。
「……でも、貴女、騙されていますよ。」
「え?!そうなんですか!」
「ええ。今まで起きたことの殆どは、私の想定の範囲内の出来事です。もっと早く助けることも、回避することも出来た事ばかりです。」
「そ、そうなんですか?!え、そっかぁ……そうだったんだ…。あ、いや、……でも、なんとかなりましたよ?」
「それは勿論ですよ。そのように動きましたから。」
今まで起きた事……確かに、なんか色んな目に遭ったが、最後にはやっぱりハイデスさんが駆けつけてくれたり、ルシスさんが助けてくれたりした事ばかりだった。でも、それはルシスさん程の人でないとどうにもならなかった事だということで。四六時中私のことを監視しているなんてきっと不可能なのだから、寧ろこうして今無事でいることに感謝するべきなのでは?
「じゃあ、ちゃんと、助けてくれたってことですよね?」
「……そのような考え方も、出来なくはありません。」
「それなら、騙されてなんか無いですよ。だって、助けようとして絶対に助けられる場合の方が、普通は少ないでしょうし、ルシスさんだって、色々あるなかで、そうやって動いてくれていたんですよね?だとしたら、私は、ルシスさんに感謝しています。」
「……律儀は阿呆の唐名という言葉をご存じで?」
はっきり伝えないと、このままではルシスさんとの関係が悪いものへ変わってしまいそうな気がした。それだけは絶対に嫌だった。だから、はっきりと伝えたのだけれど、ルシスさんから返ってきた言葉に私は意味がよく分からずにポカンと口を開けて呆けてしまった。
「え?律儀は、アホ…?」
「では、理屈と膏薬はどこへでも付くは?」
「え?…え?、」