第5章 闇夜の調べ
「あ、ハイデスさん、待って…あのっ!待ってください!どうしちゃったんですか、ハイデスさん……それに、ルシスさんと何があったんですか?今回の事は、ハイデスさんに何も伝えることもせず、着いてきてしまった私も悪かったと思います…、」
「いや、君は悪くないよ。君をここへ連れて来た判断も、決して間違っていたとは思っていない。」
先程のルシスさんとハイデスさんの会話に、私は勿論、この場にいる隊のメンバーも皆怪訝そうに眉を顰めるだけだったのだから。
このまま、黙っているだけでいいのかと、逃げるようにこの場を去ってしまうのだけは、何だかしたくないと思ってしまったのだ。
「じゃあ、!じゃあ、何をそんなにハイデスさんは怒っているんですか…?教えてください、何があったんですか?」
「それは、その、…少し、私の気が立っていただけだよ。すまない…。」
「…やっぱり、教えてくれないんですね……本当は何があったのか、何が起きているのか。私が関係しているんですよね?なのに、ジェイドさんも、ハイデスさんも何も教えてくれない……大丈夫だよって、そればかりで…。ねぇ、ハイデスさん、お願い、教えてください……。」
じっと、今度は私が真剣にハイデスさんを見詰めた。
いや、私だけではない。今この空間の違和感を、ここにいる全員が知りたいと、そう思っているのだ。ハイデスさんはそんな視線に囲まれて、居心地の悪そうに視線を泳がせながら、そうして再び私の方へ向き合った。
「……まず、今回の王国軍が君を探しに来た件だが、あれは国王に先日の天使の襲撃の件がバレていた。それに私が屋敷を空けている時を狙って軍を送ってきたという事は、こちらの情報が漏れていたという事だ。」
「それが、ルシスさんと関係が…?だって、ルシスさんは、私をその事から守ろうとこうして連れ出してくれたんですよね?」
「例え事前にジェイドにそのことを伝え君を匿ったとしてもそれが君を本当に助ける為だったのかなど、分からない。裏で手を引いている事には変わりはない。王国軍側としてコイツは一枚噛んでいる事もやはり疑わずにはいられない。」
ルシスさんが今回の件について知っていた事は分かっていたが、王様が天使の事を知っていただとか、そう言った話は初めて聞くことだった。私は思わずルシスさんを見ていた。