第2章 1 箱庭
不意に、一匹が私達に気が付いたのか近寄ってくる。
やばい、大きな声出しすぎちゃったかも。
近付くとその迫力は凄まじいものだが、何より、怖い!!
近くで見ると食べられるんじゃ無いかと思うくらい大きくて、逃げた方がいいんじゃないかと思うけれどセラフィムはその場を動こうとしない。
思わずその背中に隠れるが、これでは彼を盾にしてしまっている。
でも、ドラゴンと向かい合う度胸は私にはない。
「フフ、大丈夫だよ、アンリ……でも、少し君に興味があるみたい。」
ドラゴンが私に興味って、食料としてとかじゃなくて??
そーっとセラフィムの背中から顔を出すと、目の前に目線を合わせたドラゴンがいた。
「っ、ひゃ、!」
すごい、よく見ると身体も半透明に見える。
瞳は深い翡翠色で、まるで動く宝石だ。
「手、出してみな。」
「え、……?」
言われた通り、恐る恐る手を伸ばす。
すると、ゆっくりとドラゴンが首を伸ばし、私の手にその鼻先を触れさせた。
すると、突然何か映像のようなものが見えて、驚いて私は手を引っ込めてしまった。
「フフ、何か言ってた?」
「え、セラフィム……今の……」
「魔力の高い動物はその意思を相手に伝えられる事が出来るんだよ。アンリは何が見えたの?」
「……ここの、一匹のドラゴンが、タマゴを守ってた、けど、少し寂しそうだった……。」
「んー、何だろうね。……取りあえず、付いていってみる?」
いつの間にか先程のドラゴンが少し先でこちらを見ている。
付いてこいってことで、良いのかな……?
そのままセラフィムに手を引かれて、恐る恐る進んでいくと、やはりドラゴン達の巣があった。
近くで見ると、光るタマゴはまるで大きなオパールのようで、内側から暖かな光が溢れていた。
すごい、本当に光ってるんだ……
「へぇ、僕もここまで近付いたのは初めてかも。幾ら温厚なユウェルドラークでも、タマゴを守っている親は気が立っているからね。」
そうなんだ……確かに、こんな時期に普通近付けるものじゃないよね。
そこまで考えて、ふと違和感を感じた。
初めてって、どういうことだろ。
だって、タマゴを生むのは2、300年に一度だって……
「貴方は、前にもこの景色を見たことがあるの……?」