第2章 1 箱庭
「ドラークを見るのは初めて?」
「ドラーク?ドラゴンじゃないの……?」
「あぁ、そういう言い方もあったかな。」
この世界では、ドラークって言うのか。
それぞれ、ゆっくりとタマゴの方へ向かっていく。
番が仲良さそうに身を寄せて、各々の新しい命を守っていた。
「ここの宝石は、あの子達が守ってるんですね……。」
「フフ、そうじゃないよ。ここの宝石はあの子達が作ったんだ……まぁ、彼等にその意思は無いけどね。」
「え、作った……?」
「そう。 生きてるものは皆魔力を持っているけれど、ドラークは他の何よりもその力が大きい。そして、ここにいるユウェルドラークがその最高峰なんだよ。彼等は魔力が高いあまり、長くその場に居続けると周りの物質を変化させてしまうんだ。
ユウェルの魔力に影響されたものは鉱石となって次第にその透明度を増す。強い魔力を秘めた宝石となって、こうして巣穴を埋め尽くすんだ。」
「そんな事が起きるんですね……」
「あぁ。その宝石は見た目の美しさだけじゃなくて、強い魔力を持っているからかなり高額で取引されてね。巣穴を見付けた人間達は根こそぎその宝石とユウェル達を奪っていったよ。ユウェルは優しい性格の持ち主だから、尚更都合が良かったんだろうね。……でも、ユウェル達は巣穴を変えることはほぼしない種族でね。何千年も同じ巣穴を使い続けるんだ……だから、今残ってるのはここだけ。」
「……そんな……酷い」
「まぁ、この子達の寿命はあまりにも長いからね。人間と別れた後、残ってる巣穴に入る子も希にいるみたいだけど。魔力が強いほど、寿命が長い世界なんだ……2000年くらい生きてるのも居るんじゃないかな。こうしてタマゴを生むのも2、300年に一度程度だし。」
「え、2000年?!」
2000年って、つまりキリストが甦ってからほぼ今までってこと……??
もはや凄すぎて時間の感覚が分からない。
それに、タマゴを生むのも2、300年に一度ってことは、凄い時に巡り合わせたんだ……
世界のスケールの大きさに圧倒され、目の前の光景に立ち竦む。
この洞窟は一体どれくらいの時間をかけて作り上げられたものなのだろう……