第5章 闇夜の調べ
「おっと、それは失礼いたしやした……そういえば、挨拶の方がまだでしたね。こんなタイミングで印象は最悪でしょうが……まぁ、今が最悪でもこれから挽回していくつもりなんで、よろしくして下さいな。自分、ヨアヒム・フォン・デア・ハイデと申します。黒魔術師団のチャプレンを代表させていただいておりますので、体調、メンタル、魔力等何でもご不調など御座いましたら、このヨアヒムにお申し付けくださいな。精一杯手当の方させていただきますんでね。」
「あ、こちらこそ……よろしくお願い致します。」
にこやかに、でもどこか不自然な笑顔で笑うヨアヒムさんに、とりあえず頭を下げた。
「こいつの胡散臭さは、生まれつきだ。悪い奴では無いし、治療の腕は確かだから信用していい。」
ちょっと私の警戒した様子に気が付いてか、ハイデスさんが少し笑いながら教えてくれた。
「……でもまぁ、あのモルゲン導師があれだけの態度を示する理由がすげぇ気になってたんだが、本物の天女だとなると話が変わってくるよな。納得だわ。」
「確かに……先程も、カールとその話をアンリ様に聞いていたのですが、今の話を聞いてより納得しましたね。」
ジェーンさんの言葉にうんうんと頷く一同に、その件について納得してもらえたのは正直大変ありがたいので、かなりホッとした。
「いや、ルシスは何を企んでいるのか分からない。今回の件も、アンリを狙って軍が動いているという事を、奴は最初から分かっていた。他にも、不審な言動が多い。アンリを狙っている可能性も高い。」
ルシスさんの話になると、急に眉間に皺を寄せて、如何にも不服そうな表情を浮かべるハイデスさん。今まで、そんな反応を示していなかったので驚いたが、何故だと私から聞けるような空気では正直ない。