第5章 闇夜の調べ
「……いや、あ~…、なんかやべぇことに足突っ込んでだろうなとは思ってたが……アンリちゃん、君がそうだったのか…」
ハイデスさんが、隊の方々に私が天女だという事、どのようにして出会ったのか、その後の事。そして、今回の件が城…王が私自身がその可能性があると見て軍を送り出したのだと言うことを、必要最低限にだが説明してくれた。
だが、やはり私が天女だったという部分はかなり衝撃的な話であったらしく、暫く沈黙が続いた後、やっとのことでエルメスさんが私を見て言った。
「そう、みたいで……でも、私も何も分からないんです。本当に記憶もなければ、何も。」
「……なるほどな。そうか、分かった。オレはな、女の子は護らなきゃいけねぇものだって言われて育ったんでな。今まで通り、いや、今まで以上に俺の事も頼ってくれよな。ハイデスが居ねぇ時は代わりに守ってやるからな。」
そんな様子で、きらっきらのウインクをくれるエルメスさんに、ちょっと、いや、かなり安心した。私に対する目が変わってしまうのでは、と心配していたのだ。
「おい、エルメス。アンリに変な目を向けるな。」
ハイデスさんもそう悪態を吐きつつ、エルメスさんの様子に笑っている。
「……、隊長、あの、すみません…あとで、口封じの術、かけて下さい…。」
しかし、他のメンバーは中々そう上手く受け入れられないようで、アリアスさんは先程の口封じの術を本気でかけてくれとハイデスさんに申し込み、カールさんに関しては立ち尽くしたまま意識があるのかすら分からない。
「いや、こりゃ思ってたより相当やばい話だぜ?問答無用で全員に術かけるべきだろうよ。出なけりゃ俺ら謀反と見なされて最悪打ち首だ。」
「、え?!」
ヨアヒムさんの言葉にギョッとした。そんなに大変な事だったの?
「おい、アンリの前でそういう言葉は控えてくれないか?例え天女だと言っても、彼女は普通の子なんだ。怖がらせたくない。」