第5章 闇夜の調べ
「…すまない。お前達を巻き込みたくはなかったのが本心だ。だが、もう既に手遅れになりつつある。……しかし、これから話す事を聞けば、もう絶対に後戻りは出来ないだろう。私は、出来る事なら今回の件はこのまま私一人の責として欲しい。」
「なんだよ、水くせぇな。……組織絡みって思われんのが不味いなら、俺一人でも…」
「ちょっと副長!それこそ水臭いっすよ!?俺らだって知らないままっての方が逆に居心地悪いっすよ!」
エルメスさんに続くカールさんの言葉にアリアスさんが頷き、少しずつこの部屋の緊張感が高まってくる。ずっと聞きに徹していたジェーンさんまでもが、ハイデスさんを見る。
「ハイデス隊長、貴方がそのような顔をなさるという事は、相当な事なのでしょう。ならば尚更、わたくし達にもその責を背負わせて下さいませ。」
そう言って真っすぐに見るジェーンさんの目は真剣そのものであった。
「あぁもう、分かりやしたよ。あんたらがその姿勢なんじゃ、俺だけ聞かないわけにはいかないでしょう?」
「ヨアヒムまで……。はぁ、これは腹を括るしかないってことか。すまない、アンリ……君の話を、してもいいかい?」
「、え?私の…?」
私、もしかしてお邪魔じゃないかなぁ、なんて思っていた矢先、突然私自身に振られた話題に驚いてハイデスさんを見た。
「あぁ、今回の件は……実は君の事なんだ。だから、君自身の事を、彼らに話さなくてはならない。」
その言葉を聞いて、流石の私もハッとした。これは、きっと私の…天女としての私に関わることなんだと。
私自身が天女だという事について、どうしたらいいだとか、逆にどうしたら悪いだとか、正直まだ分からない。でもハイデスさんが信用して傍にいる方々なのであれば、例え今日初めて会った人達だとしても、私は信じたいと思うのだ。
だから、私は静かに頷いた。だって、私以上に、ハイデスさんがとても不安そうな顔をしているのだもの。
「…ありがとう、アンリ。じゃあ、これから話す事は絶対に、何があっても口外禁止だ。不安な者は口封じの術を掛けてやるから申し出ろ。」
そう言って真剣な表情を浮かべるハイデスさんに、ごくりと喉を鳴らすシュバルツの者達の緊張が走ったのだった。