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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



黙っているが、すごい速度で頷くジェーンさんがいるから確かなんだろう。びびり散らす…それは、ルシスさんに、だろうか、いや、文脈的に私に対してなんだろうが、正直信じたくない。

「えぇ……な、なんでですかぁ…。私、あの時必死で自分が何言ったかすら記憶が曖昧なのに…。」

「そんなに変なことは仰られていませんでしたよ。ジェイド殿を助けてあげて欲しいと、使用人の事をあそこまで案じていらっしゃる姿は素晴らしく、好感と敬意を覚えました。」

「だ、だって…私はジェイドさんの事を使用人だなんて思ったことありませんでしたし……本当に沢山良くしてもらって、ハイデスさんと三人で、もう家族みたいに思っているので…。」

「なるほどなぁ……なんつうか、そこに食い込むお師匠様の存在がすごいっすね。アンリちゃんにとって、お師匠様ってどういったポジションなんすか?」

「ぽ、ポジションって……、?」

突然何を聞くんだとカールさんを見たが、思ったよりもその顔は至って真剣そのもので、ジェーンさんまでもかなり真剣な表情で私の答えを待っている。

「いや、関係性って言うか……アンリちゃんにとっては、お師匠様がどんなふうに見えてるんだろうなぁ、って純粋に疑問なんすよね。ほら、俺らなんかは最初っから、怖いって言うか、手の届かない場所にいる方っていう印象しか無かったもんで…。」

昼間、鍛錬中にも同じような事を聞かれて気がする。その時はそれとなく誤魔化してしまったが、再び聞いてくるという事は余程気になるのだろう。

「えっと…、関係性、って言うと何だか難しいんですが……最初の印象は、ちょっと怖い感じはするけど、それでも、優しい人、ですかね…。今は、うーん……、」

今のルシスさんの印象と言われて、思い浮かぶのが、この屋敷に連れてきてもらってから、初めて二人きりの時間を過ごした、ちょっと甘いあの時間なわけで。ルシスさんにとっては、ここ最近気が張っていた私の緊張を解す為の手段みたいなもので、ちょっとした悪ふざけの一環なのだろう。
しかし、あの時の印象をこの二人に教えるわけにはいかないし、何より上手く言葉に出来ない。
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