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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



「そんなこと言って、アンリちゃんにみっともない姿見せたくなかっただけだろ?さっきまで何するでもギャーギャー騒いでたじゃねぇか。師匠の、ここが師匠のーって。」

「、カール!!違う!…いや、確かに、落ち着かなかった瞬間はあったが…」

カールさんの言葉にたじたじなジェーンさんは、やはりずっと落ち着きが無かったらしい。その様子を想像して、思わず笑ってしまう。

「あ、アンリ様…違うのです、これは、その……」

余程恥ずかしいのか、顔を赤くさせているジェーンさんがなんだか可愛くて、笑っていれば必死に言い訳を探そうとするその姿にまた面白くなってしまう。
だが、そのお陰で私はどこか張り詰めていた気持ちが和らいでいくのを感じていた。

「いえ、悪い意味ではなくって……ジェーンさん達といると楽しいなって思って。」

「そ、そうでしょうか……てっきり、呆れられるかと…。」

「呆れるっつうか、笑うしかねぇよな。」

カールさんの言葉に睨んでは、それでも分が悪いと思ったのか大きな溜息をつくジェーンさんはやっぱり面白い人だ。
普段は完全にカールさんの行動にジェーンさんが冷静に突っ込みを入れている感じだったが、ルシスさん関係の事となると一気にその立場は逆転するらしい。
思ったよりもいい感じでバランスの取れた二人なんだなぁ、なんて関心していれば、ヴァルターさんがお茶菓子を用意してくれたのでありがたく頂くことにする。
しかし、思っていた通り、二人は席に座ることはなく私の後ろに立ったままだ。

せめて椅子に座ったらどうかと勧めようと思ったのだが、生憎ここは私の家ではない。流石に人様の家でそんなことは出来ないな、と二人に疲れはしないかと気遣う程度に留めておいた。

「でも、アンリちゃん、あのお師匠様にあそこまでさせちゃうなんて、マジでやばいっすよね。人に言われて動く様な方じゃないっすよ?…まぁ、あの方に何か言える時点でやばいっすけどね。」

「え、…そ、それは、どういう意味でのやばい、でしょうか……失礼極まりない、みたいな…?」

「いやいや!失礼も何も、それはお師匠様が判断することなんで、アンリちゃんのすることに俺らは何を言える立場にすらないっすよ。ただ、あの方が自分から誰かの為に行動を起こすこと自体まず無いもんだから、隊の人間全員ビビり散らしてたっすよ。」
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