第2章 1 箱庭
私だけのカミサマ……
相も変わらず、にっこりと優しい笑顔で見つめる彼が眩しくて、額に口付けを落とされては俯く事しか出来なくなった。
からかわれているのだろうか……。
この世界では、こういう言葉を口にするのは当たり前なのかもしれない。
こんな場所が普通に存在していて、そういえば私の髪色にも何も驚かなかったから、気が付かないところでもこの世界とのギャップは凄まじいのかもしれない。
彼は、私が異世界から来たって言ったら何て言うのかな……気味悪がられたら、ちょっと切ないな。
そう思うと、少し胸が痛んだ。
こんなに綺麗な場所へ連れてきてくれたのに、暗くなってる自分が嫌で、忘れようと辺りを見回す。
宝石に囲まれた光の世界はあまりにも眩しかった。
すると少し先、薄暗い空間で一際輝くモノが目につく。
それは何ヵ所かにまとまっていて、大きさ自体はわりと小さそうだったが、輝く、というよりもそれ自体が光を放っていた。
「あ、あそこ、何か光ってる……。」
「ん?あぁ、あれはタマゴだよ。」
タマゴ?
光るタマゴなんてモノが存在するなんて、この世界は何てファンタジーなんだ……。
一体何のタマゴなのかと聞こうとした途端、一気に洞窟の中を強い風が吹き荒れる。
「、きゃあああっ!」
私は驚いてセラフィムにしがみついてしまった。
「おっと、お出ましかな。」
私を庇うセラフィムの背中越しに、風の吹いた方向をゆっくりと見れば、そこには信じられないモノがいた。
バサバサと音を立てて、洞窟の中に入ってきたのはどこからどう見ても、ドラゴンだった。
高さは大体3メートルくらいだろうか。
全体的にパールのような薄いグレーの身体は光に当たると青く輝いて、何よりその両の翼がこの洞窟の宝石のように透き通っていた。
「うそ、でしょ……」
いくら異世界だと言っても、突然ドラゴンに出くわすなんて心の準備が出来ていない。
この辺りだけ、大きな原石が突き出ていない理由がわかった。
ここは、ドラゴンの巣なんだ……
続くように、何匹も洞窟の中へと入ってくる。
体は皆同じグレーなのだが、光の反射で出る色は個体差があるように思えた。