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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



「まじかよ……俺もついに死神に首を落とされる時が…」

こんな時に冗談交じりに震えて見せるエルメスにやれやれとハイデスはため息が出そうになったが、こいつなりに気を使ってのことだろう。気が付けばハイデス自身、かなり緊張した空気を纏っていた事に気が付くと肩を揺らし首を鳴らした。
いくらか表情の軽くなったハイデスに、にやりと笑うエルメスに同じようにハイデスは笑って見せた。

「それ、絶対にルシスの前で言うなよ。本当に地下に連れていかれるぞ。」

冗談半分に返した言葉に、エルメスがまた大袈裟に怯えた表情を見せれば、ハイデスはこのどこか張り摘めた気持ちが緩んでいくのを感じた。

屋敷の外へと出れば既にアリアスとヨアヒムが控えていた。しかし、そのすぐ後ろに立つ見知った人物が目に入ると、ハイデスは頭にカッと血が上りそうになる。身体に掛け続けていた制御魔法の副作用か、逆に身体のコントロールが上手く行かなくなっている事に嫌気がさす。城を出て、ある程度減らしていった筈なのに、それでも身体は蝕まれていく。

ハイデスは、何とか冷静を保とうと深呼吸して、そしてまっすぐにルシスの前に出る。

「……詳しく話を聞かせて貰いたいと、言いたいところだが、まずはアンリの元へ案内して貰おうか。」

「ええ、勿論。私の屋敷へご案内致します。」

少し離れたところで控えていた部下を見やり、ルシスの城へ向かうことを伝えれば案の定思い思いの反応を見せた。

「おや、ヨアヒム……私の城へ入るのはお気に召しませんか?」

一際複雑そうな顔をしたヨアヒムに、ルシスが楽しげに笑う。

「、あ~、いや……その、私なんかが、訪れていい場所なのかと、そういった心配をですね…?」

バツが悪そうに視線を逸らすヨアヒムに、アリアスは不思議そうに首をかしげる。

「え?、あ……なら俺も、ご遠慮した方がよろしいですか?」

「いいえ。そんなことはありませんよ。既にジェーンとカールは屋敷に着いております。」

そうなのか?とアリアスを見るハイデスに、少し気まずそうに頷くアリアスの背中を悪かったと軽く叩けばすぐに馬を出した。
既に他の隊の者達は戻らせているらしく、既に風の止んだ静かな夜をハイデス達はその漆黒の背中を追うのだった。
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