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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



暗闇の石畳を馬で走らせながら、ハイデスはなんとか気持ちを落ち着かせようとしていた。
彼女が、アンリが無事なのであれば、何も恐れるものはないのだから。

見慣れた門が近付いてくると、その前にかなりの人数が集まっている。第一騎士団100騎を向かわせたというのはどうやら本当の事らしい。更に近くへ向かえば、もはや正面口が何処かすら分からぬ程に馬や人が溢れ、緊張した空気が伺える。

「おいおい、マジじゃねぇか……ハイデス、お前、何やっちまったんだ?」

唖然としたエルメスが、遠慮も無しに聞いてくるのを、他の部隊の者たちが緊張した様子で窺っている。

「……さぁな。聞いてみない事には何も分からんさ。」

わらわらと屋敷の前に群がる第一騎士団の周囲を取り囲む形で他の者たちを整列させるとその場に留まらせ、ハイデスは一人馬を降りた。
焦った様子のエルメスやアリアスの声が後ろから聞こえるが、今は彼らにも事の詳細を教えるべきではないとその場から動く事を許さなかった。

静かに近付くハイデスに気が付いた第一騎士団達を鋭く睨み付ければ、波及されるようにゆっくりと静かになっていく周囲に、カツカツとその足音を響かせた。誰しもが思わずその道を開ける気迫にギラギラと見た目ばかりが騒がしい騎士達は堪らずに尻込みをしていた。
やっと門が見えてきたという時、一人の男を取り囲むようにして叫ぶを上げる男達の姿が見えた。

ジェイドだ。

門の前でジェイドがただ一人、騎士団相手に立ち尽くしている。しかし、その姿は凛として今回の事に驚いた様子どころか、この人数相手に引けを取らない立ち姿だった。
ハイデスは、己の従者を信用してない訳では決してなかったが、そのあまりにも堂々たる姿に一瞬驚いた顔をし、そしてすぐに口元に弧を描いた。

「おい!早くここを通せ!国王陛下のご命令であるぞ!お前たちもこんなちっぽけな屋敷の結界にいつまで時間を掛けておる!?さっさと解かないか!!」
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