第5章 闇夜の調べ
「……で、何があった。」
「第一騎士団の、尖鋭部隊が兵を出しております。」
「何?どう言うことだ?目的は?」
「そ、それが……」
先程はあれ程まで早急に伝えなければならないといった態度を見せたアリアスが、急に言葉を濁す。今朝から一向に収まらない胸騒ぎを抱えているハイデスは、堪らず早くしろとせがみ立てた。
「なんだ、ハッキリ言え。」
「向かった先は、クニフォフィア、クロヴィス邸。目的不明、数は約100騎。」
「っ、……クソッ!!!!!」
頭の中が一瞬真っ白になったハイデスは、すぐにも我を取り戻すとその場から駿馬の如く走り出した。
「っな、おい、ハイデス?!」
全身の血の気が引いていくようだった。
背後で叫ぶエルメスと、焦ったように呼ぶアリアスの声ももはや聞こえない。
バサバサと靡くマントが煩わしくて、城内では禁じられている筈の瞬間転移魔法を組むとすぐさま黒魔術師団の兵士塔に三人まとめて飛ばした。
「エルメス!馬を出せ!!アリアスはヨアヒムとカールを呼んでこい!」
「っちょ、?!バッカ、お前ッ…ぁぁもう、無茶しやがる!!」
全力で走る最中、突如飛ばされ頭から地面に突っ込みそうになるエルメスに息を吐く間も与えぬ勢いで叫べば馬小屋へと走る。
しかし、目的地へと辿り着く途中で既に兵を携え、待ち構えていた部下に目を見張る。
「ハイハイ、お呼びでしょうか、隊長殿。こちらはもう既に準備が整っておりますよっと。」
ゆるりと礼をして見せた男、ヨアヒムはその漆黒のマントをばさりと被り、素早くハイデスの愛馬の手綱を差し出した。
恐らく今回の事態でハイデスがすぐ様兵を連れて向かうであろうことを予想し、既に待機していたのだろう。優秀な部下の背中を叩くとすぐに馬の背に乗った。
エルメスとアリアスもすぐにその後に続いた。
「ハイデス隊長、カールは別の指示で城から出ていて…」
「ックソ!こんな時にアイツはどこに行ってる!後から合流しろと伝えろ!」
「ま、待ってください隊長、訳が…!」
「そんなもの聞いていられるか!準備の出来たものから出ろ!すぐにだ!」