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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



『現在、クロヴィス卿及びメンゲルベルク卿は今回の報告に対し上院の認可が下りるまで解放許可を出すなとの告達である。』

『ならば良かろう!既に半刻前に上院皆共に散会なされた。』

『、そのような伝達はこちらには届いてはおらぬ。お引き取り願おう!』

聞いていれば、何やらあの冷静で面倒事を嫌うアリアスが、あろうことか毛嫌いしている第二騎士団に食いついているではないか。

『ならぬ!これは我ら師であるモルゲンシュテルン魔術名誉範士直々の御通達である!即時お二方を解放せよ!これ以上無駄にあの方々の時を食い潰すようであれば此方とて考えがある!』

もはや魔法で声を辿らずとも部屋全体へ響く程に大喝する男の声に、エルメスが楽しそうに笑った。

「……なぁんだ、アイツもやれば出来るんじゃねぇか。」

そう言うと部屋全体を埋め尽くすほどの、真っ白なバラを作り上げたエルメスは一瞬の隙にこの部屋の第二騎士団達の意識を奪った。ハイデスはそれを察知すると静かに目を瞑り、床を見る。
瞬間、そのバラたちが一斉に弾け、カッと激しい閃光がこの部屋を覆う。その光を直視した第二騎士団達が激しく呻いた。それとほぼ同時、小さな黒い光を伸ばしたハイデスはカチャンと小さな音を立て固く閉ざされていた扉の鍵を開ける。

目を抑えてよろめく第二騎士団を他所にバタンと音を立てて開けられた扉の先に見慣れた部下の姿があった。

「おっと、お迎えかな?どうやらもう用も済んだみてぇだし、悪いが俺らはここで帰らせてもらうぜ、騎士さん方よ。」

何ともワザとらしく、傍で未だによろめいて正常に立ち上がれない第二騎士団の背中をポンポンと叩いたエルメスは、最後に長い時間お疲れさんと笑ってその扉を閉じた。

「ハイデス隊長、エルメス副長、お疲れ様でございます。」

部屋を出るとアリアスが涼し気な表情をして、殺気立った顔で奥歯を嚙む第二騎士団を押し退け道を開けた。

「ああ、お前もご苦労だった。」

今すぐにでも何かを伝えようとするアリアスに、この場では言うなと無言の圧を与え、誤魔化すように静かにハイデスはアリアスの肩を叩く。三人は足早に城の出口へと向かい、人気もなくなった通路で緊張した面持ちのアリアスを見る。
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