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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



こんなにも待たされるものかと不快感を露わにしたくなるが、今ここで問題を起こせば今回の計画は全て水の泡となる。
ハイデスは、無理に己の体に掛け続けている制御魔法が確実に体を蝕んでいっているのを感じながら、時折襲う眩暈を、この部屋を監視している第二騎士団達に感づかれないようにと必死に平静を振舞った。

隣では、如何にも退屈ですと言いたげに、エルメスが僅かな魔力光を指先から出し、色と形とを様々に変化させ、それは見事に芸術的な造形を作り上げている。なんて魔力の無駄遣いだと呆れるが、その技術あってこそ黒魔術師団の魔法師のトップを務められるのである。
まぁ、実際そこまで精密に魔力光を操れたところで、それが具体的に何の役に立つのかというと、それは女を喜ばす程度の事だとエルメスは笑う。

そんなエルメスがそれは美しい花園をこの部屋に作り出しているのを横目に、ハイデスは静かに先程の王との会話を思い出す。
正直なところ、ルシスとの繋がりを気にかけていたハイデスであったが、今回の謁見ではそれに関する情報や違和感は何一つ伺えなかった。それどころか、あれ以上何か言葉を交わしたならばこちらにとって不利になるような、そんな危機感すら覚えたのだった。
自分もまだまだだな、と呆れていると、何やら廊下側が騒がしい。

「ん?なんだ、賑やかじゃねぇか。」

同時に気が付いたらしいエルメスが扉の方へ眼をやる。

「……この声は、まさかアリアスか?」

恐らく、廊下で控えている第二騎士団と話しているであろう人物の聞き覚えのある声に二人して耳をそばだてる。
同時に、エルメスがこの部屋にずらりと作り出した王都立体模型図に紛れさせ、聴覚視覚を飛ばす魔法をさりげなく飛ばすことも忘れない。
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